アセスメントにも使える! マズローの看護理論と解説

人間性心理学の生みの親と言われるアブラハム・マズロー。

マズローが提唱した「欲求5段階説」は、心理学のみならず教育やビジネス、日常生活のコミュニケーションといろいろな分野に取り入れられています。

医療や看護の現場においてもマズローの理論は臨床で用いられていて、大学や専門学校など医療・看護教育の場でもその理論は広く学ばれています。

今回はマズローの理論、その中核である「欲求の5段階説」を詳しく紹介します。

マズローの看護理論とは?

アメリカの心理学者アブラハム・マズロー(1908~1970)は、ニューヨークに生まれニューヨーク市立大学で2年を過ごした後ウィスコンシン大学に転校し、そこで心理学の修士号を取得しました。

「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きもの」という自己実現理論を提唱したマズローは、創造性や美、価値や倫理といった今まで心理学が避けてきた人間的な分野の研究を始めました。

その自己実現理論を体現するものとして、「欲求5段階説」があります。

出典:マズロー(心理学者)の欲求5段階説(自己実現理論)!この法則を示した図と、マーケティングへの応用論の解説

看護課程のテキストで見かけた方も多いのではないでしょうか?

この欲求5段階説は、項目が増えた7段階説や、図形が台形になっていたり、頂点のさらに上に超越や至高体験が存在したりと異なった解釈や解説も存在します。

看護学で取り上げられるマズローの理論は、おおむね5段階のピラミッド型となっています。

看護における取り入れ方としては、アセスメントの優先順位を決める際に用いるといったことが考えられます。

第一段階:生理的欲求

では、具体的にマズローの欲求5段階を、低次の下層から順に説明していきます。

まずは最下層「生理的欲求」(Physiological needs)ですが、人間が生きていく上での基本的・本能的欲求です。

生命を維持するために必要な食事や睡眠、排泄といったことが、この生理的欲求になります。

看護問題で優先度の基となる「危険度」は、低次な欲求ほど高く、高次になるほど低くなっていきます。

最下層である生理的欲求が看護問題の最優先であることは間違いなさそうです。

第二段階:安全欲求

生理的欲求が満たされると次のレベルである「安全欲求」(Safety needs)が発生します。

安全、つまり危険のない生活を求めることです。

さらに、安定した生活を求めることもこの「安全欲求」に含まれます。

安全で安定した住居環境、安定した経済状態、何ものにも脅かされずに安らかに過ごしたいという欲求です。

通常、健康な人間は根源的ニードである「生理的欲求」のみで成り立っているとは考えにくく、「安全欲求」も同時に持っていると思われます。

最下層の「生理的欲求」と次の階層である「安全欲求」の2つが物質的欲求として位置づけられ、その上の3階層は精神的欲求とされています。

第三段階:所属と愛の欲求(社会的欲求)

最低限の安全や安心が得られると、次に発生する欲求は社会的欲求になります。

集団に属したい、仲間が欲しいという「所属と愛の欲求」(Social needs / Love and belonging)です。

親和欲求とも呼ばれるこの階層の欲求は、アイデンティティの構築を図るために他者とのつながりを求め、これが満たされないと孤独や不安を感じます。

たとえば入院中の患者さんなら、病気やケガの治療で症状が落ち着いてくると、看護師や他の入院患者とコミュニケーションを取るようになるといったことです。

さらに、家族や友人などから心配されているか気になったりすることも、この所属と愛の欲求に分類されます。

第四段階:承認・尊厳欲求

社会的な欲求が満たされると、次には人に認めてもらいたい、尊敬されたいという欲求が生まれます。

これが「承認・尊厳欲求」(Esteem)です。

集団に属し他者と関わり始めると、次は他者やその集団内の人間から自分が価値ある存在だと認めて欲しくなります。

あの人はつらいリハビリも頑張って続けている、といった評価や賞賛を受けたいという欲求です。

マズローは、この階層の欲求には2つのレベルがあり、低レベルの欲求は他者からの尊敬や評価を欲するもので、高レベルの欲求は自分自身の尊重や評価を重視するというものです。

高レベルの欲求が満たされないと、劣等感や無力感といったマイナスの思考が生まれることになります。

第五段階:自己実現欲求

最上層にあるのが「自己実現欲求」(Self-actualization)です。

自分の能力やスキル、可能性を引き出したい、限界に挑戦したい、「あるべき自分」になりたいという欲求で、下層の4段階が欠乏欲求であるのに対し、この自己実現欲求は成長欲求だとされています。

仕事やボランティアなどで社会に貢献したいという思いや、芸術などで誰にもたどり着けない高みを目指すのも自己実現欲求です。

疾病によって障害が生じたとしても、創作活動や社会貢献をしたいといった望みを持つ人の根底にあるものが自己実現欲求です。

この欲求の源泉は自己の中にあり、対価を求めない無償性を伴っています。

全ての行動の動機がこの「自己実現欲求」に帰結されるとも言われています。

マズローの欲求5段階説は、人間性心理学から生まれ、ビジネスや教育に役立つ理論として使われています。

医療・看護の現場でも古くから取り入れられ、また多くの人に研究されてきました。

5段階ピラミッドをしっかり理解し、看護におけるアセスメントのツールとして人間観察・ニードの理解に役立てましょう!