ヘンダーソンの看護理論と看護過程について

ナイチンゲールで始まった近代看護を、理論的に発展させたのがヘンダーソンの看護理論と言えるかもしれません。

看護師であれば、おそらく知らない方はいないのではないかとも思えるナイチンゲールとヘンダーソンですが、その看護理論は今も多くの看護師・医療関係者によって研究されています。

今回は、ヘンダーソンの看護理論についてリサーチしました。

看護理論の基礎をなすものとしてあまりにも有名なヘンダーソンの看護理論を、分かりやすく詳しく解説します。

ヘンダーソンの看護理論について

看護理論家ヴァージニア・ヘンダーソン(1897~1996)はアメリカミズーリ州のカンザスシティに生まれました。

彼女の終生の師となるアニー・ウォーバートン・グッドリッチが校長を務めるアメリカ陸軍看護学校に学び、ワシントンDCで看護師のキャリアをスタートしました。

後にコロンビア大学で学んだヘンダーソンは、1934年に「看護教育」で修士号を取得し、その後コロンビア大学で教壇にも立ちました。

国際看護師協会の依頼に応じて1960年に著した「看護の基本となるもの」(原題:Basic Principles of Nursing Care)は、今なお読み継がれる看護のバイブル的な著書です。

その中でヘンダーソンは、看護の独自の機能を次のように述べています。

看護婦(師)の独自の機能は、病人であれ健康人であれ各人が、健康あるいは健康の回復(あるいは平和な死)の一助となるような生活行動を行うのを援助することである。その人が必要なだけの体力と意志力と知識とをもっていれば、これらの生活行動は他者の援助を得なくても可能であろう。この援助は、その人ができるだけ早く自立できるようにしむけるやり方で行う。

出典:厚生労働省 新たな看護のあり方に関する検討会・資料3看護の独自の機能について

また、看護師の第一義的責任を「患者が日常生活パターンを保つのを助けること,すなわちふつうは他者に助けてもらわなくてもできる,呼吸,食事,排泄,休息,睡眠,活動,身体の清潔,体温の保持,適切に衣類を着ける等々の行動を助けること」と定義しています。

出典:豊田久美子・京都大学「つなぐ・つなげる・つながる-過去から未来へ-

ヘンダーソンの「14の基本的欲求」

ヘンダーソンの「看護の基本となるもの」の中核をなすのが、「14の基本的欲求(ニード)」です。

その14の基本的欲求と、それに当てはまる情報を紹介します。

この「14の基本的欲求(ニード)」は、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが「自己実現理論」で示した欲求5段階に当てはめる研究者も少なくありません。

出典:LIFE STYLE PLUS 仕事でもプライベートでも使える!!マズローの欲求5段階説

つまり、1~8が生理的欲求、9が安全欲求、10と11が所属と愛の欲求、12が承認の欲求、13と14が自己実現の欲求にあたるとの説です。

さらに、ナイチンゲールの著書「看護覚書」の目次を見てみると…

  1. 換気と加温
  2. 家屋の健康
  3. ちょっとした管理
  4. 物音
  5. 変化のあること
  6. 食事
  7. どんな食べ物を?
  8. ベッドと寝具
  9. 部屋と壁の清潔
  10. 身体の清潔
  11. 希望や助言を気楽に言う
  12. 病人の観察

ヘンダーソンの14の基本的欲求の多くが挙げられています。

このことから、ヘンダーソンの看護理論は、ナイチンゲールの看護論を受け継ぎ発展させたものと考えることもできます。

基本的欲求に影響を及ぼす常在条件

看護記録のアセスメントでヘンダーソンの理論を用いる場合、基本的欲求に影響を与える「常在条件」を考慮に入れなければいけません。

さらに、病理的状態も基本的欲求に影響を与え変容させる可能性があります。

1 飢餓状態、致命的嘔吐、下痢を含む水および電解質の著しい平衡傷害
2 急性酸素欠乏状態
3 ショック状態(虚脱と失血を含む)
4 意識障害―気絶、昏睡、せん妄
5 異常な体温をもたらすような温熱環境にさらされる
6 急性発熱状態(あらゆる原因のもの)
7 局所的外傷、創傷および/あるいは感染
8 伝染性疾患状態
9 手術前状態
10 手術後状態
11 疾病による、あるいは治療上指示された動けない状態
12 持続性ないし難治性の疼痛

常在条件、病理的状態を考慮して基本的欲求(ニード)を充足させることが看護であるとヘンダーソンは述べています。

近代看護理論の基礎とも言えるヘンダーソンの看護理論は、多くの養成校でも取り入れられ、多くの看護従事者が医療現場で実践しています。

実習記録や看護記録のS.O.A.Pに取り入れたり、研修でのグループワークで題材にしたりと、50年以上を経た今でも看護従事者の礎となっているヘンダーソンの看護理論をよりよく理解しましょう!